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裁判官選任(8) ノースカロライナ州裁判所の場合

司法 裁判所 裁判官選任 アメリカ

 アメリカでは現在、トランプ大統領により連邦最高裁裁判官に指名されたニール・ゴーサッチ判事の上院での審査が行われています。そんなに詳しくニュースをチェックしているわけではないですが、「共和党の裁判官も民主党の裁判官もいない。ただいるのは裁判官だ」など、いろいろ興味深い発言をしているようですが、民主党フィリバスターで臨む方針を固めたようで*1、どのように推移していくか注目されるところです。

 さて、裁判官人事が議論になっているのはアメリカの連邦レベルだけではありません。他国ではイギリスでも現在、最高裁判事の公募が出ており、こちらについても気が乗れば調べて書いてみたいなと思っているのですが、今回はよりホットなノースカロライナ州の話にします。ノースカロライナでは裁判官選挙制度の改革がこのところ懸案となっており、議会が通した法案にロイ・クーパー知事が拒否権を行使しましたが、現地時間の一昨日と昨日で上下院がオーバーライドし、最終的に法案が成立、全裁判所につき非党派的制度から党派的制度への移行が決定しました。

 ノースカロライナでは裁判官選挙制度の改革が頻繁に検討され、実際に先進的な改革も行われています。Ballotpediaをもとにまとめると、1868年に公選制が導入されて以来、現在まで選挙による任命が用いられているのですが、90年代までメリットセレクション導入の試みが繰り返された(そして失敗した)後、2002年に非党派的選挙制度が導入され、今日に至っています*2。ただし、最近もいろいろと改革されていて、2015年には再任時の選挙をいわゆる再任選挙(信任投票)に切り替える改革が行われたものの、翌年に裁判所によって違憲とされています。同年、州最高裁および控訴裁の公選制を党派的制度へと転換する法案が成立し、昨日、一審レベルでも党派的制度を導入する法案が成立した、という流れになります*3

 これにより、ノースカロライナは党派的制度を用いる8つ目の州となりました。なんとなくのイメージとしては、裁判官を選挙で選ぶことへの懸念から、全体的には党派的制度→非党派的制度→メリットセレクションと推移してきたような印象があるかもしれません。実際、拒否権を行使したクーパー知事も「ノースカロライナは裁判官が公平・公正であってほしいと考えており、法廷に政党政治の居場所はない」「裁判官は経験や能力に基づいて選ぶべきであって、どの政党が彼らを選んだかによって選ぶべきではない」などと述べて党派的制度に反対したわけですが*4、もしそうだとすると、なぜ今、党派的制度を導入しようと思ったのか、という疑問も湧きます。これについて、法案提出者の議員は、政党ラベルという裁判官候補者に関する情報として重要な「手がかり」が有権者に利用可能ではないという非党派的制度の性質に起因する根本的な問題を指摘します*5。実際、ノースカロライナにおいて、非党派的制度への転換によって選挙の競争度の低下(現職の優位性の増大)や投票率の低下が生じていると論じる研究もあります*6

*1:共同通信米最高裁人事拒否の姿勢 民主党トップ、議事妨害で」(2017年3月24日更新・確認)。

*2:先進的な改革というのは、1つとして、この2002年のときに同時に選挙運動の公費負担の制度がはじめて導入されたのですが、私もそんなによく理解しているわけではないので特に触れません。たとえば、G. Alan Tarr, Without Fear or Favor: Judicial Independence and Judicial Accountability in the States (Stanford University Press, 2012)などで取り上げられています。

*3:Ballotpedia "Judicial selection in North Carolina" (last visited 2017/3/24).

*4:The Progressive Pulse "In first veto, Cooper says no to partisan judicial elections" (last updated 2017/3/16, last visited 2017/3/24).

*5:The Progressive Pulse "House Republicans pass committee hurdle to make last judicial elections partisan again" (last updated 2017/2/21, last visited 2017/3/24).

*6:Chris W. Bonneau and Melinda Gann Hall, In Defense of Judicial Elections (Routledge, 2009), ch. 5.