読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ハンセン病特別法廷、最高裁が謝罪

司法 裁判所

時事通信『患者への差別助長』謝罪=一律許可、違法認める-ハンセン病『特別法廷』・最高裁」(4/25)

 ハンセン病患者の裁判が1970年代初頭まで隔離施設などに設置された「特別法廷」で開かれていた問題で、最高裁の今崎幸彦事務総長は25日、「一律に設置を許可した最高裁の運用は違法だった」と認めた。患者に対する偏見や差別を助長するものだったとした上で、「人格と尊厳を傷つけたことを深く反省し、おわびする」と謝罪した。
 最高裁が司法手続きの誤りを認めて謝罪するのは極めて異例。

 最高裁は、ハンセン病患者の裁判を事実上非公開の隔離された「特別法廷」で行ってきた問題で*1、25日、調査報告書をまとめ、正式に謝罪しました。報告書は裁判所の公式ウェブサイトから閲覧することができます*2

 この問題をめぐっては、全国ハンセン病療養所入所者協議会などが2013年11月6日に検証を求める要望書を提出*3。これを契機として、最高裁は2014年5月19日に総務局内に「ハンセン病を理由とする開廷場所指定に関する調査委員会」を設置し*4、療養所での聞き取り調査などを行ってきました。さらに昨年の9月には、「内部調査では不十分」という意見が最高裁内にあったことから、調査委員会の調査について意見を求める有識者委員会も立ち上げています*5

 この報告書の中で、最高裁は、「特別法廷」を認めてきたという行為自体について、次のようにまとめています。

 このように、最高裁判所裁判官会議から専決権限を付与された事務総局は、昭和23年から昭和47年までの間、裁判所外における開廷の必要性を認定して上申を認可するに際して、下級裁判所を通じて、療養所長に対し、「らい予防上重大な支障を来たすおそれ」がないと認めなかった理由の説明を求めるなどして、当事者のハンセン病の病状、他者への伝染可能性の有無及び程度、並びに将来における病状の改善や伝染可能性の低下を見込みの有無及び時期を聴取したり、上記1、2の科学的な知見や諸事情を具体的に検討したりすることなく、基本的に当事者が現にハンセン病に罹患していることが確認できれば、裁判所外における開廷の必要性を認定して、開廷場所の指定を行うとのいわば定型的な運用を行っていたと認められる(p. 45-46)。

 そして、こうした処理が「不合理な差別的取扱いといえるか否か」 については、「収集した資料ではこの点、必ずしも明らかでない」としながらも、他の病気を理由とした上申の場合と比較すると認可率が著しく高く、「このような事情を考慮すれば、上記の定型的な運用は、ハンセン病患者に対してのみ行われていたことが強く疑われる」(p. 47)。裁判所法69条1項(開廷の場所)および2項(他の場所での開廷)に照らすと、

上記の定型的な運用が、ハンセン病患者に対してのみ行われていたとすれば、それは、ハンセン病患者の場合のみ、他の疾病の患者の場合とは異なって、例外的な場合にのみ行うべき指定を実際にはむしろ原則的に行うという取扱いを行っていたことを意味し、遅くとも昭和35年以降については、ハンセン病患者に対してのみ上記のような定型的な運用が行われることにつき、合理的理由があったとはいい難い。

 以上のとおり、上記の事務総局による裁判所外における開廷の必要性の認定の運用は、遅くとも昭和35年以降については、合理性を欠く差別的な取扱いであったことが強く疑われ、認可が許されるのは真にやむを得ない場合に限られると解される裁判所法69条2項に違反するものであったといわざるを得ない。

 そして、当時採られていたハンセン病患者に対する施設入所政策が、多くの患者の人権に対する大きな制限・制約になったこと、その背景として、一般社会において極めて厳しい偏見、差別が存在していたことは明らかであるところ、事務総局による上記のような運用は、このような一般社会における偏見、差別を助長するもので、深く反省すべきである(p. 47、強調は引用者)。

と述べています。調査報告書は長いので以上はそのうちの一部ですが、全文は裁判所ウェブサイトでご覧になれますので、そちらをチェックしてください*6

*1:この問題の背景については、NHK橋本淳解説委員による解説がよくまとまっているように思います。NHKウェブサイト「時論公論 『ハンセン病〝特別法廷〟と裁判所の責任』」(2014年11月13日更新、2016年4月25日確認)。ハンセン病一般については、私は勉強不足であまり本を読めていないのですが、昨年出版された高木智子『隔離の記憶』(彩流社、2015年)は大変興味深く読みました。

*2:裁判所ウェブサイト「ハンセン病を理由とする開廷場所指定に関する調査報告書及び最高裁判所裁判官会議談話について」(2016年4月25日更新・確認)。

*3:日本経済新聞ウェブサイト「『ハンセン病法廷』検証、最高裁 外部設置の正当性めぐり」(2014年10月18日更新、2016年4月25日確認)。

*4:最高裁判所ハンセン病を理由とする開廷場所指定の調査に関する有識者委員会」第1回委員会議事要旨p. 2参照。

*5:朝日新聞2015年7月3日朝刊。

*6:1点だけ加えて「まとめ」の部分から引用しておくと、上記脚注1にあるサイトで指摘されているように「事実上の非公開」であったことについては、「下級裁判所が、最高裁判所の指示に従い、裁判所の掲示場及び開廷場所の正門等において告示を行っていたこと、下級裁判所は、指定された開廷場所において傍聴を許していたことが推認でき、このような開廷場所の指定に当たっての運用は、憲法の定める公開の要請を念頭に置いて行われたものと認められるし、裁判所法69条2項が想定する公開の要請を満たさないと解される具体的形状を有する場所が開廷場所として選定された事例があったとまで認定するには至らなかった」(p. 58)としています。この点、有識者委員会の報告では批判されています。また、調査報告書の上記引用部などでは「事務総局」が主語になっているところが見られますが、有識者委員会の報告は「しかし、念のために付言すれば、この問題は、事務総局だけの問題ではなく、最高裁判所自体、さらにはこの問題に関わった裁判官、裁判所職員も、そういった差別的な取扱いを容認していた点で大いに反省すべきであるといえるし、今後、そのようなことのないように人権意識を高めるための方策を採るべきである」(p. 6-7)と釘を刺しています。