裁判官選任(4) インディアナ州最高裁判所の場合

 昨年11月、アメリカはインディアナ州最高裁判事、ブレント・E・ディクソンが2016年春の引退を表明しました。ディクソン判事は1986年に州最高裁判事に任命され、2012年から2014年には長官を務めました。在任30年ということで、その期間は歴史上2番目の長さとなるそうです*1

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 アメリカは州ごとに裁判官選任の方法が異なります。アメリカ司法協会のレポートによると、①いわゆるメリット・セレクションを用いているのが15州、②知事ないし議会の任命としているのが4州、③党派的選挙を採用しているのが8州、④非党派的選挙を採用しているのが14州、そして⑤メリット・セレクションと他の方法を組み合わせているのが9州だそうです。インディアナ州はこのうち⑤に当てはまり、最高裁などではメリット・セレクションを使うものの、他では公選制を用いるといったものになっています*2

 インディアナ州最高裁における選任システムについては、その公式ウェブサイトにわかりやすく記載されていますので、こちらを紹介することにします(以下、ざっくり訳です)。

 今日の最高裁判所は、1970年に人民に承認され、1972年1月1日に施行された憲法修正をその基礎としている。この修正は、1851年憲法の司法条項をほぼ全面的に書き換えたものである。それは、最高裁判所の選任から党派的選挙を取り除き、再任の際の有権者の承認手続きを導入した。

 現在の最高裁は、1人の長官と4人の裁判官から構成される。しかし、憲法は、議会の決議により裁判官数を8人まで増員することができるとしている。現職の裁判官は、再任に対してイエスかノーかで答える全州的な選挙に付される。有権者により承認されると10年間の任期がはじまり、その後も10年ごとに同様の再任選挙に付される。現行法の下では、75歳が定年となっている。

 最高裁に空席が生まれたら、もしくは裁判官が〔再任〕選挙で拒絶されたら、7人からなる裁判官指名委員会(Judicial Nominating Commission)が各空席ごとに3人の有資格者を知事に対して推薦することを州憲法は求めている。知事はその3人の中から任命しなければならず、そこで選ばれた人は最低でも2年間、最高裁判所判事を務めてから、総選挙の際に再任選挙にかけられることになる。そこで承認されれば、10年の任期がはじまる。

 最高裁判所判事となる要件として、インディアナ州で法律実務を少なくとも10年間行っているか、または第一審裁判所の判事を少なくとも5年間は務めていなければならない。1971年公共法427条の下、裁判官指名委員会により提示される任命候補者は「最も適格な候補者」でなければならない。そこで考慮されることとしては、候補者の法律教育、書面作成、法律実務における評判、体調、金銭的な利害、および公共的な活動が含まれる*3

 

 5月9日、マイク・ペンス知事はジェフリー・S・スローター氏をディクソン判事の後任に任命しました。スローター氏は、タフト・ステティニアス&ホリスターのインディアナ事務所のパートナー弁護士で、インディアナ法律家財団(Indiana Bar Foundation)の会長を務める人物です。市民教育などボランティア活動にも積極的だったようで、保守派の団体として知られるフェデラリスト協会のインディアナ支部の運営にも携わっていたそうです*4。スローター氏は前知事時代の2012年にも州最高裁判事の最終的な3人の候補者に選ばれていました*5

 上の引用部も念頭に置きながら、今回の選任過程をたどってみましょう。まず、ディクソン判事が退任を声明したのは昨年の11月9日でした。同月12日から後任の募集がはじまり*6、今年1月25日に締め切られました。その日のうちに30人の応募者の名前がホームページにアップされ*7、28日には顔写真付きで詳細が掲載されました*8。そのうち1人が辞退し、残りの29人の応募者が、2月17日〜19日の日程で、裁判官指名委員会による公開面接を受けました。まず委員会は、この面接に基づき、15人の最終候補者(ファイナリスト)を選出し、19日に公表しました*9。この15日を対象にした二次面接は3月3日〜4日に行われ、最終的に、3月4日、委員会は3人の被任命者候補を発表し、ペンス知事に報告しました*10。州憲法上、知事は委員会の報告から60日以内に任命しなければならないことになっていますが(さもなくば州最高裁長官が任命する)、5月9日にスローター氏を任命した、という流れになります。

 メリットセレクションの肝である裁判官指名委員会は、インディアナ州の場合、ロレッタ・H・ラッシュ州最高裁長官を委員長とし、7人のメンバーから構成されています。 このうち3人は知事により任命された市民で、残りの3人はインディアナ法律家協会により選ばれた弁護士となっています(それぞれ3年任期)*11

*1:"Justice Dickson announces spring 2016 retirement" (last updated 2015/9/11, last visited 2016/4/28).

*2:American Judicature Society "Judicial Selection in the States: Appellate and General Jurisdiction Courts" (2013, last visited 2016/4/28).

*3:"Today's Supreme Court" (last visited 2016/4/28).

*4:"Governor Pence Names Geoffrey G. Slaughter to Indiana Supreme Court" (last updated 2016/5/9, last visited 2016/5/13).

*5:Indiana Public Media "Gov. Pense Has 60 Days To Choose State Supreme Court Justice" (last updated 2016/3/9, last visited 2016/5/13).

*6:募集要項については以下のページを参照。"Application Instructions for the Indiana Supreme Court" (last visited 2016/5/13).

*7:"30 apply for Indiana Supreme Court vacancy" (last updated 2016/1/25, last visited 2016/5/13).

*8:"Candidate Applications" (last updated 2016/1/28, last visited 2016/5/13).

*9:"Commission selects 15 finalists for second interview" (last updated 2016/2/19, last visited 2016/5/13).

*10:"Hostetler, Kincaid, and Slaughter nominees for Supreme Court" (last updated 2016/3/4, last visited 2016/5/13).

*11:"About the Commissions" (last visited 2016/5/13).