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裁判官選挙における外部団体の資金拠出が過去最大に

アメリカ 司法 政治

 先日、アメリカ大統領選挙が行われ、得票数では下回ったもののより多くの選挙人を獲得したドナルド・トランプが勝利を収めました。大統領選が行われた11月8日はElection Dayであり、大統領選だけでなく連邦議会や州の選挙も実施されました。今回はそのうち、裁判官選挙の話題です。

 近年、裁判官選挙に対して用いられるカネが膨大になっていることが指摘されていますが*1、Brennan Center for Justiceによると、2015〜16年に外部団体によってテレビに用いられた金額が過去最大になったとのこと*2。その額は推定で1940万ドル、日本円にして20億円超となります。中でも最も拠出額が大きかったのは州レベルにおいて共和党の候補者を支援するRepublican State Leadership Committeeで、ルイジアナノースカロライナなど8つの州で推定400万ドルを費やしたそうです。反対に、政党が拠出する額は減少しているそうで、全体の1%に満たない程度となっています。

 問題は、こうして拠出される資金の大部分が「ダークマネー」「グレーマネー」になっていることで、つまり献金者が明らかにされていないことだと指摘されています。2015〜16年にテレビに資金を出した20の団体のうち、情報を公開しているのは3団体で、残りの17団体は献金者を公開していません。そのため、誰が裁判官選挙に対して影響を及ぼそうとしているのか、そうしてカネを出した人や団体と関係する(利益相反のある)裁判がどう取り扱われているのかがわからない、と論じられています。

 Brennan Center for Justiceの記事はいくつかのケースを取り上げていますが、ここではそのうちの1つであるノースカロライナの事例を紹介します。ノースカロライナでは、11月8日、共和党の現職であるロバート・エドモンズ判事に対し民主党のマイケル・モーガン候補が挑戦し、オバマ大統領の支持も得ていた*3モーガン候補が勝利。その結果として、州最高裁の党派バランスが共和党の多数から民主党の多数へと変容したとされています*4。この選挙ではトータルで287万3000ドルが外部団体によりテレビへと費やされました。主な争点は選挙区割りで、たとえばモーガン候補を応援していたNorth Carolina Families Firstという団体は、ゲリマンダリングを支持したとしてエドモンズ判事を批判するCMを製作しています*5

 こうした状況について、Brennan Center for Justiceの記事は、「州における裁判官選任過程はあまりにも党派的になり、かつ政治化されており、不当な影響を受けずに公正で公平な裁判、アカウンタビリティ、そして民主主義を確保する上で裁判所が果たす本質的な役割を脅かしている」と指摘しています。

*1:たとえば、The Economist "Electing judges: Courting cash" (last updated 2015/11/14, last visited 2016/11/18).

*2:Brennan Center for Justice "Spending By Outside Groups in Judicial Races Hits Record High, Secret Money Dominates" (last updated 2016/11/15, last visited 2016/11/18).

*3:

*4:ノースカロライナでは非党派的選挙の制度がとられていますが、候補者の党派は知られているようです。なお、この非党派的選挙の制度について、ノースカロライナでは昨年、イエス・ノー式による再任選挙(retention election)への制度改革の法案が可決されましたが、今年の3月にウェイク郡最高裁(Wake County Superior Court)で違憲判決が下され、5月には州最高裁もこれを維持したことから、非党派的選挙の制度が残っています。Ballotpedia "Judicial selection in North Carolina" and "North Carolina Supreme Court elections, 2016" (last visited 2016/11/18).

*5: