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トランプ大統領の連邦最高裁判事指名候補が明らかに

 先日正式に大統領に就任したドナルド・トランプですが、来週2月2日にも連邦最高裁判事を指名すると報じられています。昨年亡くなったアントニン・スカリア氏の後任であり、オバマ前大統領はメリック・ガーランド判事を指名しましたが、議会の承認には至っていませんでした。

 今週の報道で、トランプ大統領は4人の候補を検討しているとされています。APが挙げるのは、ウィリアム・プライヤー、ニール・ゴーサッチ、トーマス・ハーディマンの3名*1。Washington PostやWall Street Journalはさらにレイモンド・ケスリッジも候補に入っているとしています*2。4人とも、トランプ大統領が以前に提示した21人の候補者リストに挙げられていました*3。いずれも共和党大統領任命の連邦巡回区控訴裁判所判事で、50代前半〜半ばの白人男性です。

 基礎的な属性で違いがあるとすれば、出身ロースクールでしょうか。ゴーサッチは、連邦最高裁判事の出身ロースクールとして最も多いハーバードの出身ですが、他の3人は、プライヤーがテュレーン(1人)、ハーディマンがジョージタウン(0人)、ケスリッジがミシガン(3人)と、過去にあまり多くなかったロースクールの出身です(カッコ内は過去の人数)。そういう面での多様性は、あるといえばあるのかもしれません。

 スポーツの予想ゲームとして、Fantasy◯◯というのがあります(たとえばFantasy Football)。それと同じノリで、判決を予想するFantasy SCOTUSとともに、裁判官任命を予想するFantasy Justiceというのがあるのですが(私も先日The Economistの記事で知りました*4)、その現時点での結果ではゴーサッチがトップ、プライヤーが2位となっています。

 それぞれの候補者について私はよく知りませんので、主要な3人の候補者について、SCOTUSblogを中心にいくつかの記事から簡単にまとめてみます(特に注記しない限り以下はSCOTUSblogを参照しています)*5

ウィリアム・プライヤー:1962年生まれ。2004年2月、ジョージ・W・ブッシュ大統領により、アラバマ州司法長官から第11巡回区控訴裁判所判事に任命。司法長官時代には、州最高裁庁舎からの十戒記念碑の撤去を拒んだロイ・ムーア長官を解任したことで知られています*6。裁判官任命の上院審査では、Roe v. Wadeを「憲法史において最も忌まわしいもの」と呼んだ発言などが問題視され、これは現在でも広く引用されています(最終的には上院は53対45で承認)。刑事事件などで概ね政府側に立った判決を下してきた保守派として知られる一方、公民権関連の事件、たとえば宗教関係の事件では信教の自由を重視し、LGBTQの権利にも理解を示してきたとされています。実際、プライヤー自身が執筆したものではないものの、トランスジェンダーであること(性転換したこと)を理由に職員を解雇したジョージア州は平等保護条項を侵害したとしたGlenn v. Brumbyで多数派に加わったことから、保守派の間では彼の資質について議論が生じているようです*7

ニール・ゴーサッチ:1967年生まれ。2006年8月、ジョージ・W・ブッシュ大統領により、連邦司法省副司法次官から第10巡回区控訴裁判所判事に任命。オックスフォードやハーバードで学び、保守派裁判官の下でクラークを務め、裁判所内外で経験を積んできた同氏は評価が高く、スカリアの後任として最も自然な人選だと評されています。また、文言主義者(textualist)であること、公共空間からの宗教的表現の排除に懐疑的であることなど、スカリアとの類似性も多く指摘されています。他方、スカリアとの違いが表れる領域として行政法が挙げられており、昨年8月のGutierrez-Brizuela v. Lynchにおいて「シェブロン法理」*8を否定したことは、「行政法の眠たい世界に波を起こした」とされています。

トーマス・ハーディマン:1965年生まれ。2007年4月、ジョージ・W・ブッシュ大統領により、ペンシルベニア州西地区連邦地方裁判所判事から第3巡回区控訴裁判所判事に任命。タクシー運転手をしながらロースクールの学費を稼いだというエピソードを持っており、アイビーリーグではないジョージタウン大学ローセンターの出身です。2003年に裁判官に転身。控訴裁判事としての約10年間、ハーディマンは共和党にとって重要な問題において、一貫して保守的な判断を下してきたとされています。たとえば、銃所持に関する事件では、拳銃保持の許可を受ける際にその「正当な必要性」を示すよう求めるニュージャージー州の拳銃許可法に関するDrake v. Filkoにおいて、ハーディマンはそれが修正第2条を侵害しているという反対意見を執筆しています。また、Florence v. Board of Chosen Freeholdersでは、ニュージャージーにおける逮捕者に対するストリップ・サーチ(裸にしての所持品検査)を妥当だとし、後に連邦最高裁により支持されています。ちなみに、ハーディマンは同じく第3巡回区控訴裁判所判事であるトランプ大統領の姉、マリアン・トランプ・バリー(現在はシニア裁判官)の同僚でもあります。

*1:AP "Trump narrows down Supreme Court nominee list to 3" (last updated 2017/1/24, last visited 2017/1/27).

*2:Above the Law "Supreme Court Update: And Then There Were Three Four" (last updated 2017/1/24, last visited 2017/1/27).

*3:USA Today "Trump's 21 potential court nominees are overwhelmingly white, male and from red states" (last updated 2016/12/2, last visited 2017/1/27).

*4:The Economist "Fantasy Justice: Predicting Donald Trump’s pick for the Supreme Court" (last updated 2017/1/23, last visited 2017/1/27).

*5:SCOTUSblog "Potential nominee profile: William Pryor (Expanded)" (last updated 2017/1/11, last visited 2017/1/27), "Potential nominee profile: Neil Gorsuch" (last updated 2017/1/13, last visited 2017/1/27), "Potential nominee profile: Thomas Hardiman" (last updated 2017/1/23, last visited 2017/1/27).

*6:山口智裁判所庁舎の十戒記念碑」『神戸外大論叢』55巻4号、2004年参照。

*7:Politico "Trump's down to 3 in Supreme Court search" (last updated 2017/1/24, last visited 2017/1/27).

*8:ダニエル・ファーバー「アメリカ制定法解釈の傾向—シェブロン法理、テクスチャリズム、合衆国最高裁」『筑波法政』68号、2016年参照。